牛革は日本国内はもちろん、世界的にももっとも流通量が多い。それは、すなわち牛肉を食用とする人口が多いことに起因する。革はほとんどが食用牛の副産物なのである。そして、流通量が多いからこそ種類は細分化され、それぞれの個性を活かした製品づくりがなされている。種類っていってもロースとかヒレじゃないぞ。
 
         
 
     
  左からフラットステアハイド、キップスキン、カーフスキン(すべてペアスロープ)。加工の工程が異なるため一概にはいえないが、それぞれのキメの細かさが分かる。触れてみれば、さらにその違いが分かるだろう。
     
     
  原皮はほとんどが輸入となるが、和牛を使用した牛革もある。体躯の引き締まった但馬牛の原皮は、数は少ないが輸入原皮にも劣らない色艶を有する。写真はペアスロープで使用される和牛革。
     
     
  牛や馬が大判だといっても、1枚の革(半裁)の全てが使用できるわけではない。背中に沿った部分は良好な革質だが、脚や腹に近い部分は捩れや傷も多く、製品には使用できない。
     

 

 

 

 

 

 

ステアハイド(成牛・去勢牛)
生後3〜6ヶ月以内に去勢したオスで、生後2年以上を経たものの原皮を使用する。ポピュラーな原皮で、去勢により比較的おとなしいことから傷が少ない。大判で使用でき、厚みもわりと平均している。言うことなしな優等生。人間でいえば、草食成人男子ってところか。

ブルハイド(雄牛)
生後3年以上のオスの成牛を原皮とする。ステアよりも厚手になり、繊維組織の粗さも見られる。去勢を受けていない場合は、傷も多く見つけられる。その厚みを利用して靴底などに利用される。人間でいえば、革ジャンを着てバイクに乗ってはやんちゃしているうちに、中年になっちゃったって感じ。

カウハイド(雌牛)
生後2年以上のメスの成牛を原皮とする。おとなしさから傷も少ない。ステアほどの厚みはないが、その分柔軟さを持っている。ステア同様にポピュラーな原皮で、広範囲で利用される。成人女性のようなしとやかさ肌触りが特徴。深い意味はないが、製品でのステアとカウの違いはわかりにくい。

キップスキン(中牛皮)
生後半年から1年余りの仔牛の原皮を使用。仔牛ゆえに流通量が少なく、さらに面積も小さいので、割高になる。しかし、そこそこ育って、しかもピチピチな若さがあるので、強度もあれば柔らかさもあり、そのうえキメの細やかさも併せ持つ。まさに若者。

カーフスキン(仔牛皮)
生後6ヶ月以内の仔牛の原皮。キメの細かさも柔らかさもトップクラスだが、面積はキップよりも小さく、やや薄手になるので強さは求められない。牛革ではもっとも高級品で高級小物などに使用される。たいてい“仔牛のなんちゃら”という料理は高級だものね。

 
 
         
 
     
  比較的性格のおとなしい牛に比べて、気性の荒い馬や野生の鹿などは傷がつきものである。穴はどうにもならないが、掻き傷や虫刺されなどは皮革自体の性能には大きく影響しない。これは革の個性として受け入れて欲しい。
 

成牛同様に面積が大きく、皮の組織も牛皮に似て強靱。しかしながら皮の構造上、薄くなりがちなので強靱さはほどほどになってしまう。加工により、一般的なイメージにある固い馬革にもできれば、軽く柔らかい馬革にもなる。銀面と呼ばれる表面の繊維が独特で、牛革とは違った艶や光沢も魅力。牛革に比べて流通量は極端に少ないうえに、臀部の皮は繊維が緻密でより強く美しいのでコードバンと呼ばれて別流通してしまうので、大きな身体の割に高価にならざるを得ない。さらに、馬はやんちゃなので傷も多い。この傷を許せりゃいいけど、避けるとなるともっと割高になる。馬は革になっても気むずかしい。
 
 
 
     
 
         
 
 

皮の組織が濃密かつ複雑に絡み合っているために、柔軟性と伸縮性、通気性、強度においても高水準でバランスする。着心地も良く、まるで布をまとっているように感じる。銀面と呼ばれる表面の模様であるシボも特徴があるが、その銀面の弱さはいかんともしがたく、柔軟性と相まって弱い革というイメージを持たれがちという残念な面もある。これは、早くいい感じになる……ともいえるが、本来は引き裂き強度も耐久性も同厚の牛革よりも高い。馬革同様に流通量は少なく、面積も小さいので高価になりがち。レンズ拭きに使われるセーム革も鹿革である。
 
         
 
         
 
大柄なシボが特徴のラム(左)と細やかな銀面のシープ(右)
 

大きくはシープスとラムに分かれ、さらにシープはヘアシープとウールシープに大別される。ヘアシープは直毛種の羊を原皮とし、牛革ほどではないが強度もあり、柔軟さも併せ持つ。ウールシープは巻毛種の羊で、採毛や毛皮に用いられることが多いが、皮革としては軽さと柔軟さを持つ。ラムスキンは生後1年以内の仔羊を原皮とし、抜群のなめらかさで高級品に用いられる。ムートンは一般的に毛皮・羊毛皮のことを指すことが多く、フライトジャケットなどに用いられる表側にはレザー塗料やラッカー仕上げでコーティングされる。
 
         
 
         
   
 
羊と山羊で混同しがちだが、羊よりも緻密な繊維組織を持つ。優れた耐摩耗性と弾力性を持つが、やや堅さがあり型くずれしにくい。細やかなシボを持つ美しい銀面も魅力。ただし、流通量が少なく面積も小さいので高価である。子山羊の革はキッドスキンと呼ばれ、繊細な銀面を持ち、高級靴の甲革や手袋などに用いられる。当然、さらに高価である。
         
 
         
   
 
日本に流通する皮革のなかで、唯一すべてを国産でまかなえ、輸出もされている。銀面に残る3点ずつ寄り添った毛穴が特徴。柔軟性と通気性に優れる。革靴の内張や作業用手袋から高級ブランドの小物まで使用される汎用性と比較的安価であることも大きな魅力であるが、傷が多めであることと、部位による革質の均等化がやや劣る。
         
 
         
   
 
毛穴が均等に並ぶごつごつした見た目が最大の特徴だが、その軽さと耐久性にも優れた革素材である。飼育もされており比較的流通は安定しているが、面積は小さいうえに傷も付きやすいことなどもあり、高級小物や靴などで用いられる。
その昔、西洋の有名ブランドでとても高価なライダースを製作したこともあった。
         
 
         
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繊維密度が高く、薄くても十分な強度を確保することができる。しなやかさと伸びにくさもあり、言うことなしのようだが、当然のごとく流通量は少なく、傷も多い。高級革靴やスパイクなどに用いられる。
         
 
         
   
 
クロコダイルに代表されるワニ革、ニシキヘビ科のパイソンに代表されるヘビ革、一般にリザードとも呼ばれるトカゲ革など、それぞれが特徴のある模様と手触りを持つ。財布などの小物や鞄などに用いられることが多い。